NIKKEI 100年の資産形成

vol.3

お客さまから託された
信頼に応えるために専門性の高い
サービスを自律的に提供

三井住友信託銀行 取締役副社長

岩熊 清司

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 人生100年時代を迎え、個人の金融資産を取り巻くニーズは多様化・高度化・複雑化を極めている。お客さま本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)を全うするために金融機関には、お客さま一人ひとりの事情をくみ取るコンサルティングと幅広いソリューションが求められる。国内唯一の独立系専業信託銀行である三井住友信託銀行は、銀行と信託の業務をワンストップで提供できる点と、専門性の高いコンサルティングに強みを持つ。取締役副社長の岩熊清司氏が人生100年時代における同社の取り組みについて語った。

あらゆるお客さまに最適解を提供
『世代別コンサルティング』

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 金融機関に求められるフィデューシャリー・デューティーとは、当社が最も重視する行動規範であるのと同時に、「信託」の根幹を成す基本的な概念といえる。お客さまから信頼を託され、お客さまの立場で専門性の高いサービスを自律的に提供にする――。これこそが我々の存在意義であり、当社のあらゆる活動はこの行動規範の下で実践している。

 例えば、若年層に対しては、住宅ローンを組むタイミングで同時に将来に向けた資産形成や万一の備えについて提案する。退職を間近に控えた現役世代には、退職金や年金制度を踏まえたセカンドライフへのプランニングを行う。そしてシニア層には、認知症への備えや相続対策といった気付きを与えるなど、あらゆる世代のお客さまに対して、最適なコンサルティングとソリューションを提供する。

 当社ではこれを『世代別コンサルティング』と呼び、100店舗以上の営業現場において2,000人強の担当者が日々、実践している。お客さま本位の徹底を図るとともに、そこで得られる知見や情報を組織的に蓄積することで、コンサルティングはもちろん、商品やサービスの質向上を追求する。

 信託の機能を使って高齢期の生活と資産管理をサポートする『人生100年応援信託〈100年パスポート〉』という商品がある。発売後も営業現場を通じてお客さまからの評価や希望をヒアリングし、それを商品のブラッシュアップにつなげるサイクルを機能させることで、何度も商品改定を繰り返してきた。お客さま本位の徹底から得られる知見をさらなる商品の質向上に生かしている事例といえよう。

多様化するニーズに応える
幅広い商品ラインアップとサービス

 人生100年時代を迎えた今、お客さまのニーズは多様化している。あらゆるお客さまに最適なコンサルティングとソリューションを提供するためには、個別の事情を踏まえ、希望をかなえる幅広い商品ラインアップとサービスが欠かせない。

 そもそも信託銀行は、信託や投資一任、不動産仲介など、業務範囲が広いことに加え、当社は、死後事務をサポートする『おひとりさま信託』やペットのための遺言サービス、住宅ローン契約時に遺言をお預かりする『ハウジングウィル』など、他社にはないユニークな商品を導入。お客さま一人ひとりに寄り添ったソリューションを提供する。世界有数のプライベートバンキング事業を展開するスイスのUBSグループとの協働による、超富裕層向けのサービスも当社独自の取り組みだ。

 資産形成・資産運用に関するコンサルティングでは、「会う」「知る」「ゴール(目標)の明確化」「商品・サービスの提案」「アフターフォロー」という5つのステップに分解することで、お客さまにとってのベストパートナーになることを目指す(図表参照)。

資産形成に関するコンサルティングの5つのステップ

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高い専門性を持つ人材豊富
育成プログラムにも積極的

 誰しもライフサイクルに応じて資産規模や負債の状況は変化し、それに応じて資産形成や運用の課題も変わってくるもの。アフターフォローを定期的に行うことで、常にお客さまのライフプランに寄り添った運用が実現する。アフターフォローの経験・知見が蓄積され、それを組織的に共有することでさらに質の高い提案につながるという好循環が、資産形成・運用のコンサルティングに具現化されている。

 高齢期になっても運用を継続しつつ、運用商品から信託商品へ移行することも可能。信託の仕組みや信託銀行としての強みを生かして、お客さま一人ひとりの資産の形成・運用・管理・承継に貢献したい。

 真にお客さま本位の高度なコンサルティングを提供し続けるためには当然、高い専門性が求められる。営業店の社員の約半数は、国家資格である宅地建物取引士の資格を保有する。これほど多くの社員がこの資格を持つ金融機関は、当社だけだ。また、資産運用や相続のプロフェッショナルである財務コンサルタントは現在、約270人在籍している。

 プロフェッショナルの育成のために、資格試験の推奨・応援プログラムの導入にも積極的だ。近年注目されている「ジェロントロジー(老年学)」をいち早く取り入れた『銀行ジェロントロジスト』を立ち上げるなど、金融業界全体での人材育成にも取り組む。今後も専門性の高いサービスの自律的な提供で資金と資産、資本の好循環を促し、社会的価値を創出していく。

▸ 詳細はこちらをご確認ください
https://www.smtb.jp/

※本取材は2021年10月18日に行いました。

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