NIKKEI 100年の資産形成

vol.4

証券業から資産コンサルティング業へ
お客様の想いを実現するパートナー

野村證券 営業企画部長

平野 和枝

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 「貯蓄から資産形成へ」の流れが加速する中で、証券会社に求められる役割が変わりつつある。野村證券は「証券業」から「資産コンサルティング業」へと自らのビジネスを定義し直す。お客様のライフイベントや目標に合わせて、ゴールベース資産管理を実現し、お客様の人生に伴走するパートナーを目指すという。戦略の狙いや具体的な取り組みなどについて、同社営業企画部長の平野和枝氏に聞いた。

資産形成の目的は千差万別
一人で複数の目的を持つことも

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 「貯蓄から資産形成へ」の流れが加速する中で、長期・分散・積み立てによる資産形成で成功体験を持つ投資家が増えていることも理由の一つとして考えられる。これは、過去の証券投資にはなかった広がり方といえるかもしれない。その一方、足元で気に掛かるのは資産形成をする必要性を感じながらも「何から始めればいいのかわからない」「どんな金融商品を利用すべきか」と悩む投資初心者の存在だ。これから資産形成に踏み出そうと考えている方こそ、疑問点や不安を感じることも多いだろう。

 インターネットを検索すれば、資産形成に関する情報やヒントを得ることはできる。しかしそれが本当に自分にふさわしい資産形成を行ううえで有益な情報であるとは限らない。なぜなら、資産形成を始める目的やリスクに対する感度は人によって千差万別だからだ。「老後にゆとりある生活をしたい」「未来のライフイベントのために資金を確実に増やしたい」「家族のために資産を増やしたい」「応援したい企業がある」「資産を守りながら次世代に引き継ぎたい」「漠然とした将来の不安解消」など、目的は多岐にわたる。

 しかも価値観が多様化し、人生100年時代を迎えた今は、一人が様々な資産形成の目的を持ち、そして年齢とともにその目的も変化していく。そうしたお客様の想いや目的を実現するため、資産の悩みにお応えして、お客様の豊かさに貢献していくことが私たちの存在意義と考える。

夢の実現に向けたサービス
「ゴールベース資産管理」

 例えば、リタイア後に豊かに暮らしたいという想いは、多くの人が持っているはずだ。ただし、ひと口に「豊かに暮らす」といっても、その意味するところは多様だ。具体的にヒアリングさせていただくと、当然人それぞれ異なることを実感する。

 豊かさのものさしが多様化するなかで私たちが目指したいのは、お客様の人生におけるゴール、夢などをしっかりヒアリングしたうえで、その実現に向けた多様なサービスを提供することだ。これが私たちがお手伝いする「ゴールベース資産管理」だ。

 ゴールベース資産管理において大切なのは、まずお客様の資産全体(当社で預かる資産以外も含めたすべての資産)を把握したうえで、お客様の資産状況と目指すゴールとの間にはどのようなギャップがあるかを共有すること。そして、ギャップを解消するためにどの程度の時間軸でどのような資産配分をしていくかをご提示することだ。

 そのために、最適と考えられる資産配分と現状の資産配分との差異を視覚的にわかりやすく示すツールも新たに用意している。

ゴールベース資産管理の考え方

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リタイア世代や高齢者など
年代に応じた専門のパートナー

 さらに当社には、野村グループが年金などの大手投資家向けに資産運用サービスで培ってきたノウハウを集結して資産配分やファンド選定を行う『CIO(チーフ・インベストメント・オフィス)サービス』があるが、これを個人投資家のお客様向けの投資一任サービスにも活用している。これまで以上に資産を効果的に守り、効率的に増やすことを目指す運用が可能になった。このCIOサービスは、分析・提案ツールにも組み込まれ、多くのお客様に対し客観性、一貫性を担保しながら長期にわたる運用をサポートできる体制を整えてきた。

 お客様のゴールベース資産管理において、営業担当者の存在はより重要となる。当社では営業担当者を「パートナー」と呼び、専門的なスキルアップを継続的に行っている。ファイナンシャル・プランナー(FP)はもとより、証券アナリストや宅地建物取引士など、幅広い資格を取得できる環境も充実している。

 パートナーの中でもリタイアメント層を専門に担当する「ゆとりたいあパートナー」は、退職後のライフプランを具体化することで資産寿命を延ばし、長寿社会を豊かに過ごすためのプランニングやサービスの提供に努めている。また「ハートフルパートナー」は、相続や贈与など、高齢者特有の課題を解決するために必要な専門知識を数多く習得しサービス提供に努めている。加齢に伴う認知機能の低下を考慮し、高齢者の経済活動や金融取引に関する諸問題を扱う金融ジェロントロジー(老年学)と呼ばれる学問領域があるが、認知判断機能など高齢者の心身の変化や適切な対応について研修を受け、お客様を良く理解し、きめ細やかな対応で向き合っている。

ニーズに的確にお応えするためチャネルを見直し
お客様との接点拡充を目指す

 デジタルの活用による利便性向上やコールセンターの強化に加え、2019年8月には、より多くのお客様に最適なサービスを提供するため、チャネル・フォーメーションの見直しを行った。それぞれのお客様のニーズにお応えできるパートナーを再配置するとともに、接点を拡充し、差別化したご提案を拡大するのが狙いだ。これまではお客様からお預かりする金融資産の運用パフォーマンスの向上に重点を置いてビジネスを展開してきたが、お客様のライフプランや想い、目的をヒアリングし、お客様一人ひとりの資産の悩みや課題にお応えする「資産コンサルティング業」への進化を私たちの目指すべき姿として体制を急速に整えている。真にお客様の人生の豊かさに貢献するために人生100年時代にふさわしいパートナーになりたいと思う。

※本取材は2021年11月9日に行いました。

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