NIKKEI 100年の資産形成

【100年の資産形成 リレーインタビュー】資産形成の潮流を語る vol.1「お客様の想いを実現するために伴走する 専門性に優れたパートナーを目指す」野村證券 営業部門 営業企画担当 執行役員 平野和枝氏

 デフレからインフレへと、私たちを取り巻く経済環境は大きな変化を迎えている。個人の資産運用に対する考え方や投資行動も変化を余儀なくされており、この変化に対応しないことこそがリスクになる。そんな中、野村證券は、顧客一人ひとりの夢や目的の達成に向けて資産を運用するゴールベース資産管理を実践しながら、顧客の人生に伴走するパートナーを目指すという。同社の具体的な取り組みについて執行役員の平野和枝氏に聞いた。

アイコン多様化・複雑化する
資産運用の目的
ゴールベース資産管理で
最適解を提案

 資産所得倍増プランにも注目が集まる中、NISA(少額投資非課税制度)をはじめとする投資の税制優遇制度の充実とともに、投資家のすそ野は確実に広がっている。その一方で、低インフレ、低成長、低金利が長く続いてきた日本において、人生100年時代を精神的にも金銭的にも豊かに安心して過ごしたいと考えるお客様の悩みや課題はより複雑になっていることを実感している。

 働き方の多様性が広がり、リタイアの時期も人それぞれに異なるなど、人生のマルチステージ化は今後も進んでいくだろう。資産運用のニーズは多様化・複雑化を極めるが、実際はその目的が明確になっていないお客様も多く存在するのが現実だ。

 野村證券では、個人の資産運用において「ゴールベース資産管理」の実践をお手伝いする。お客様一人ひとりの想いや目的をヒアリングし、その資産の悩みや課題にお応えできるよう資産コンサルティングを進化させている。金融資産だけでなくお客様の資産全体(当社で預る資産以外も含めたすべての資産)を見据えて、目指すゴールとの間にどのようなギャップがあるのかを共有する。そしてそのギャップを解消するための時間軸や資産配分(ポートフォリオ)を提示していく。環境変化やライフイベントに応じてPLAN、DO、CHECK、ACTを繰り返しながら、ゴールの実現に向けてお客様に伴走していくことが「ゴールベース資産管理」に必要であり、当社が取り組みを強化していることだ。

 当社では営業担当者を「パートナー」と呼ぶ。お客様の将来に貢献する領域を金融資産だけではなく全資産まで広げ、さまざまな課題解決に向けて長期にわたって伴走していくために必要な専門性の高い知識も身に付けられる環境がある。ファイナンシャルプランナー(FP)はもちろん、宅地建物取引士(宅建)、証券アナリスト、中小企業診断士などの資格保有者が多数在籍しているのも当社の強みだ。2022年からは、お客様のニーズに合わせて高品質なポートフォリオ運用を提供するためにポートフォリオコンサルタントの資格取得も進めている。

ゴールベース
資産管理のイメージ

イメージ図

アイコン環境の変化に
応じた備えを提案
デジタルツールの活用で
顧客体験価値を高める

 足元では国内外の様々な要因でインフレが加速し、資産価値が大きく変動している。こうした先々の状況が読みにくい時こそ、専門的なスキルを擁したパートナーが欠かせないと考える。お客様の資産全体を広く、深く理解し、長期的な時間軸で寄り添い、さらにご家族のお考えやマーケット環境の変化に応じたリスク管理や備えを提案できるのもパートナーの強みであり付加価値だ。

 お客様の話に耳を傾ければ傾けるほど、資産運用を始める目的は人それぞれであることを実感する。「ゆとりある生活を送りたい」「企業を応援したい」「リスキリングするための資産づくり」「世代を超えて資産を運用したい」など、本当にさまざまだ。そのようなお客様の想いや目的を実現するため、投資の一歩に最適と考えられる商品や手段が何であるか情報提供も含めてサポートしていきたい。

 そのサポートの一つとして、デジタルツールの拡充にも力を入れ、お客様のお役に立てるようなサービスや情報を届けている。資産を一元管理し、資産寿命を可視化できる「OneStock」、質の高い情報で資産運用をサポートする「FiNTOS!」、そして株価チェックから取引までをワンストップでできる「NOMURA」といったアプリを提供。オンライン・オフラインのタッチポイントを揃え、シームレスにサービスを展開できる世界を目指すことでお客様とパートナーは繋がり続け、関係性はより強固になる。こうしたデジタルツールを充実させることで、今後も顧客体験価値(CX)を高めていきたい。

アイコン人生の可能性を広げる
金融リテラシーの向上

 近年、「ファイナンシャル・ウェルビーイング」という言葉を耳にする機会が増えた。フィナンシャル・ウェルビーイングは、健全なお金の管理によって安心感や幸福感、充実感がもたらされている状態を指す。お金について学ぶことは人生の可能性や選択肢を広げることにもつながる。そこで2022年4月に、「金融リテラシーの向上」を社内横断で取り組むことを目的に「ファイナンシャル・ウェルビーイング室」を新設した。

 資産運用の重要性はもちろんのこと、若いときから金融や経済に関する知識や判断力を身に着けるための金融経済教育の普及について、1990年代から20年以上にわたり他の金融機関に先がけて取り組んできた。あらゆる世代に提供してきた金融経済教育の累計受講者数は2022年3月末時点で約95万人に上り、2025年までに100万人を目指す。

 経済的自助努力が求められる時代、従業員の経済的幸福の実現を目的とした人財投資が働きがいと企業成長の鍵であると注目されている。各企業の福利厚生など資産形成をサポートすることで従業員のエンゲージメントを高めながら、企業価値向上へ繋げる取り組みも進めていく。

アイコン社会課題の解決を通じた
持続的成長の実現

2025年に創立100周年を迎えるにあたり、NOMURAグループの総合力で多様なプロダクトやソリューション・サービスをお届けし、お客様の課題解決への貢献領域を広げていきたい。

そして、日本人としてあるべき資産形成、日本人の思考にあった資産運用の最適解を追求してきたいと思う。「貯蓄から資産形成へ」という社会全体の証券投資への流れを後押しすることでより多くのお客様の資産価値をお守りし、資本市場の拡大に貢献していきたい。

人生100年時代における資産寿命の延伸や市場環境の変化に対応できる資産形成はどのようにあるべきか、社会課題の解決への取り組みを通じ、お客様に選ばれる真のパートナーを目指していきたいと思う。

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