腕に着ける計器として、そしてステータスを示すアイテムとしてもパイロットたちの間で確固たる地位を得たナビタイマーの人気は、やがて一般にも及んでいく。
これは印象的なデザインの魅力も大きいだろう。回転計算尺を装備するがゆえのインパクトあふれるプロポーション、3つのインダイヤルと目盛りによってメカニカルなムードが強調された盤面など、当時の人たちの目には相当新鮮で、クールに映ったはずだ。まず感度の高い人たちを虜にし、そのなかにはジャズトランペッターのマイルス・ディヴィス、映画俳優のセルジュ・ゲンズブール、F1ドライバーのジム・クラークやグラハム・ヒルなどもいた。こうした時代を彩るスターたちの着用が、人気にさらなる拍車をかけたのは言うまでもない。
もちろんクロノグラフの名門ならではの高い性能や堅固なつくりも、時計好きの心をがっちり捉えた要因だ。62年のNASAマーキュリー計画では、スコット・カーペンター少佐がナビタイマーを24時間運針にアレンジした「ナビタイマー コスモノート」を腕に地球周回飛行を成功させている。つまり、ナビタイマーは“世界で初めて宇宙を旅したクロノグラフ”でもあるのだ。