提供:リシャールミルジャパン株式会社
「邂逅かいこうの日」
文筆家松浦弥太郎まつうらやたろう 著書多数。『暮しの手帖』の編集長を九年間務め、その後、IT業界に転身し起業に関わる。企業の取締役、アドバイザー、編集長として活動。19年より「ヤタロウズ・グラノーラ」の販売も手掛ける。
「邂逅かいこうの日」
文筆家松浦弥太郎「この腕時計をきみに譲りたいんだが……」
齢八十を過ぎたかれがぼくに言った。
「大切なものなので、今のうちに」
ジャケットの袖を上げ、手首からはずした腕時計は、
かれがこれまで収集してきたヴィンテージではなく、
ケースバックが美しくカーブした、
スケルトン構造の自動巻きクロノグラフだった。
「わたしがなぜそう思うのか、いずれその理由がわかるよ」
かれは窓から射しこむ陽光に腕時計をかざした。
「この美しい芸術品は、誰のものでもない。
人類の至高として、未来にのこさなければならない。
これまではわたしがあずかってきたが、
つぎはきみにあずかってほしい。そしていつか、
きみがふさわしいと思う人に託してくれればいい」
四十年以上、最高位の美術品を収集してきたかれだった。
数々の高名な作品を所有してきたのは、
自分の手で未来にのこしたいがための使命だと言った。
「きみにとって大きな決断だと思う。
けれども、この腕時計はきみの人生をかならず変える」
そう言って、かれは腕時計をぼくの手に渡し、
この日の邂逅を祝福するように微笑んだ。
卓越した芸術品をひきつぐ、ぼくの人生がはじまった。
リシャール・ミル
RM 11-03
オートマティック フライバッククロノグラフ
リシャール・ミル ファミリーである、F1レーサーだったフェリペ・マッサ氏と協力開発したモデル、RM 011の後継機。F1カーの車内では強烈なG(重力)が発生するが、フリースプラングテンプなどを採用することでGや振動に耐えられるように設計されている。また「可変慣性モーメントシステム」を採用することで、使う人によって自動巻きローターの巻き上げ効率を最適化できるようにした。この可変慣性モーメントローターはF1に使用される空気力学的パーツにインスピレーションを受けたもので、リシャール・ミルは、この世界初の試みを自動巻きムーブメントモデルに多く装備している。
2016年発表
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Vol.1
「腕につける
映画監督前田哲
極上のエンタテイメント」映画は世代を超えて、時を越えて受け継がれていく。
映画が誕生して、百二十年余り経つが、
その創世記頃の映画を現在も観ることができる。>> -
Vol.2
「邂逅かいこうの日」
文筆家松浦弥太郎「この腕時計をきみに譲りたいんだが……」
齢八十を過ぎたかれがぼくに言った。
「大切なものなので、今のうちに」>> -
Vol.3
「軽さという贅沢」
評論家山田五郎宝石がちりばめられているわけでもないのに
何千万円もする機械式の腕時計が、少なからず存在する。
驚くにはあたらない。>> -
Vol.4
「並外れた
早稲田大学ビジネススクール教授
男の〝当り前〟は、
顧客にとっての
〝類い稀〟なアート」
長沢伸也欧州ラグジュアリーブランドは総じて長い歴史を有するが、
「長い歴史」が必要条件ならば
それを新設するのは不可能になる。>> -
Vol.5
「リーダーのみが知る、
早稲田大学教授中林美恵子
時の重たさ」国を率いるリーダーたちは、一刻一刻に、勝負ををかけて生きる。
そう感じたのは、米国連邦議会上院で国家予算編成に
奔走するようになってからだ。>> -
Vol.6
「時を刻む
金沢21世紀美術館 館長/
透明な〝生き物〟」
東京藝術大学国際芸術創造研究科教授
長谷川祐子「芸術術」は表現であり、欲求であり、言語である一方、
「クラフト」は技術であり、文化の質である。
時間の経過を一刻一刻正確に、しかも身につけている人間の >> -
Vol.7
「〝エクストリーム〟な
宇宙エバンジェリスト青木英剛
宇宙を感じられる時計」私はF1、深海、航空、宇宙など極限環境で培われた技術を
エクストリームテクノロジーと呼んでいる。
その中でも宇宙は最も過酷な環境下にあり >>