1. TOP
  2. これまでの掲載書籍一覧
  3. 2016年9月号
  4. 「稼ぎ方」の教科書

2016年9月の『押さえておきたい良書

稼ぎ方」の教科書

“ど直球”の質問で型破りな若手起業家8人のホンネを引き出す

『「稼ぎ方」の教科書』
田原 総一朗 著
実務教育出版
2016/08 264p 1,500円(税別)

amazonBooks rakutenBooks

 世界を一変させるようなイノベーションがなかなか起こらないとの嘆きが聞こえる日本でも、型破りの発想、非常識とも思われるビジネスモデルや経営手法で成功を収める若手起業家は何人もいる。
 本書では、さまざまな領域の8人の若き起業家たちと、テレビ朝日系列の討論番組「朝まで生テレビ!」の司会でも知られるジャーナリスト・田原総一朗さんが対談。80歳を超える田原さんの“直球”の質問から、8人各々のこれまでの歩みや独特なものの考え方に触れることができる。なお本書は、ニコニコ生放送の人気対談番組「若手経営者に学びまくる対談」の「60分一本勝負」の白熱対談の書籍化である。
 登場する起業家は、以下のバラエティに富んだ面々だ。
・柳澤大輔(株式会社カヤック代表取締役CEO)
・寺尾玄(バルミューダ株式会社代表取締役社長)
・松本光一(株式会社テンガ代表取締役)
・駒崎弘樹(認定NPO法人フローレンス代表理事)
・石川康晴(株式会社ストライプインターナショナル〈旧・株式会社クロスカンパニー〉代表取締役社長)
・中川悠介(アソビシステム株式会社代表取締役社長)
・井戸実(株式会社エムグラントフードサービス代表取締役社長)
・牧浦土雅(社会起業家)

“おもしろく”働くために「サイコロ給」を導入

“柳澤 報酬というのは評価の最たるものですけど、サイコロ給でなら報酬の中に評価をしない評価を入れられるんです。
田原 サイコロは完全に運任せだからね。
柳澤 報酬というプロとしての評価の最たるものに、全く評価を手放した評価を入れる。これには、人の評価を気にし過ぎているとおもしろく働けないというメッセージが込められているということに気づいたんです。”(p.22-23より)

 柳澤大輔さんがCEOを務める株式会社カヤックは、学生時代の二人の友人とともに創業した当初から「面白法人」をキャッチコピーにしている。ウェブサイトやスマホアプリ、ソーシャルゲームなどの独創的なITコンテンツで注目を集める同社は、とにかく「おもしろい」という価値観が何より優先する。
 「サイコロ給」は、文字どおりサイコロを振って、出た目で報酬の一部を決めるというもの。制度自体もきわめてユニークでおもしろいが、引用したように、「どれだけ会社の利益に貢献したか」などを基準とした評価から社員を解放し、「おもしろく働けるようにする」目的もあるのだ。

17歳から海外NGOで活躍する社会起業家のタフな交渉ノウハウ

 牧浦土雅さんは、22歳にしてすでに多彩なキャリアを積んでいる。なんと13歳で単身渡英し、17歳で途上国の教育格差解消をめざすNGO「e-education」の一員としてアフリカ・ルワンダで活動を始めている。田原さんは対談で、そんな牧浦さんの“冒険”のエピソードや、その過程で身につけたしたたかな交渉ノウハウを引き出している。
 牧浦さんは17歳にして政府の高官と渡りあった。その時に狙ったのが「希少性を高める」こと。NGOのメンバーというだけでは、「ああ、またか」と思われて、なかなか会ってもらえない。そこで「日本からわざわざ教育について調査に来たリサーチャー」ということにした。そんな人は一人しかいないので、物珍しさに会ってもらえたのだという。(担当:情報工場 吉川清史)

amazonBooks rakutenBooks

2016年9月のブックレビュー

情報工場 読書人ウェブ 三省堂書店