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2017年2月の『押さえておきたい良書

グーグルを驚愕させた日本人の知らないニッポン企業

アフリカで大人気の越境EC業者のビジネスモデルとは

『グーグルを驚愕させた日本人の知らないニッポン企業』
山川 博功 著
講談社(講談社+α新書)
2016/11 208p 840円(税別)

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 東京都調布市にある中古車販売を主たる業務とする会社、株式会社ビィ・フォアード。
 海外の消費者とインターネットを通じて直接取引を行う越境EC(電子商取引)という販売手法をとっている。日本での知名度は低いが、とくにアフリカでは抜群の人気を誇り、圧倒的なシェアがあるそうだ。
 その人気は現地でのウェブサイトのアクセス数を見れば明らかだ。グーグルの、そのサイトにどれだけのアクセスがあったかを示すページビューのランキングを見ると、ビィ・フォアードのサイトはジンバブエで7位、ザンビアやマラウイで8位だ(2014年6月時点)。トップ10に並ぶのはフェイスブックやヤフー、ユーチューブなどの世界的に有名なサイトばかり。この現象に驚いたグーグルの副社長が急きょ来日し、ビィ・フォアードを訪問したという。
 本書『グーグルを驚愕させた日本人の知らないニッポン企業』は、ビィ・フォアード創業者で代表取締役の著者が、中古車輸出の新しいビジネスモデルが成功するまでの経緯と理由を解説しつつ、ECビジネス、アフリカビジネスのヒントを提供している。

利便性や価格の安さ、高品質が現地の口コミで広がる

 ビィ・フォアードが登場する以前の中古車輸出は、日本の業者が現地業者に中古車を売り、現地業者がエンドユーザーに販売するというのが常識だった。ビィ・フォアードはECを取り入れることでその常識をくつがえし、エンドユーザーが日本から直接買えるようにした。ECならば24時間いつでも注文できるし、中間マージンがなくなるため販売価格を低く抑えられる。同社はさらに中古車をアフリカへダイレクトに運ぶルートを開拓して輸送費を下げ、届くまでの日数を短縮した。
 ちょうどその頃からアフリカでは携帯電話やスマートフォンが爆発的に普及し始めていた。インターネットに接続できるようになりネットショッピングを始めたばかりの現地の消費者に対し、ビィ・フォアードは一件一件ていねいに対応した。すると、利便性や価格、中古日本車の品質の良さが評判を呼び、その名は口コミで広がっていった。販売した中古車には会社のロゴをあしらったステッカーを貼っていたため、それをつけた車が走り回ることも、ビィ・フォアードの知名度を高める要因になった。

併設の買取業者の在庫を“お試し”でサイトに載せる

“ネット販売のいいところは、「いまは人気がないかもしれないけど、こういう車はどうだろう?」と確信のない車を掲載して、反応を見ることができる点です。評判がいいようなら、そこで初めて本格的に仕込めばいい。在庫リスクを減らせる。
 この点、われわれには大きなアドバンテージがあります。ワイズ山川が買取業をやっているおかげで、手元に大量の車があるからです。”(『グーグルを驚愕させた日本人の知らないニッポン企業』p.74より)

 ビィ・フォアードは、著者が1999年に独立して開業した中古車買取業のワイズ山川を母体としており、著者は2004年にビィ・フォアードを創業した後も両社の代表取締役を兼務していた。上記引用のようにそのメリットを生かし、ビィ・フォアードではワイズ山川の在庫を使って、一種の市場調査をすることができた。
 すると、日本では解体に回されるような人気のない車が予想外にアフリカで売れていく。新しもの好きの日本人は十分に乗れる車であっても買換えの対象にする。また、車を丁寧に扱い、走行距離も短く、道路事情がいいために車体のダメージが少ない。著者は、そこに商機を見出し、アフリカへの本格的輸出に乗り出したのである。(担当:情報工場 内山貴子)

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2017年2月のブックレビュー

情報工場 読書人ウェブ 三省堂書店